
ここ1〜2年で、Even G2やRay-Ban Metaのようにスマートグラスと呼ばれる製品群がかなり増えてきました。
10年以上前にGoogle Glassが提案した未来がやっと訪れたかと思うと感慨深いものがありますが、正直言ってまだまだ「普及し始めた」とすら言いづらい状況にあると思います。
いろいろな理由があると思いますが、その最たるものだと僕が考えているのは、具体的な利用シーンがはっきり思い浮かばないというものです。手元にスマートフォンがある状況で、なぜわざわざスマートグラスを追加で購入する価値があるのか見えにくいんですよ。実際僕自身もその考えの一人でした。
そんななか、今回「世界で一番売れているディスプレイ搭載AIグラス」というRokidの『Rokid スマートAIグラス』を1ヶ月半ほどお借りすることができました。
色々なシーンで実際に使ってみたり、各種機能に触れてみたので、実際に使ってみてどうだったのかを紹介していきます。
この記事はRokidの提供でお送りします。レビューにあたっては製品サンプルを貸与いただいていますが、記事内容には一切関与していません。
カメラも機能も全部盛りAIグラス『Rokid スマートAIグラス』
そもそも「スマートグラス」というのは、グラス面にディスプレイを内蔵していたり、テンプルにスピーカーを搭載している、メガネ型のウェアラブルデバイスのこと。最近はその中でもAIとの連携を全面に押し出す製品が増えていて、「AIグラス」と呼ばれたりもします。
現状AIグラスと呼ばれている製品は、
- カメラとスピーカーがあって画面がない
- 画面はあるけどカメラがない
と少し中途半端な製品が多いのですが、『Rokid スマートAIグラス』は簡単に言えば「全部乗せ」な1台。一般販売に先駆けて行われたクラウドファンディングでは6億3000万円以上を集め、プラットフォーム「Makuake」史上最高額を達成するなど、かなり注目度も高い一品。
使える機能も翻訳、カメラ撮影、ナビゲーション、テレプロンプターなど多種多様。とにかく「これ一台で全部できる」というのが最大の特徴と言えます。
| 価格 | 109,890円(税込) |
| 重量 | 約49g |
| ディスプレイ | 光導波路+Micro-LED、グリーン単色、両眼、最大1,500ニト |
| カメラ | ソニー製 IMX681 1,200万画素、109°広角 |
| チップ | Qualcomm Snapdragon AR1 Gen 1 + NXP RT600 |
| AI | Rokid AI(中身はGPT-5とGeminiから選択可) |
| 翻訳 | オンライン89言語以上、うち8言語はオフライン対応 |
| バッテリー | 210mAh、20分で約80%充電 |
スペックはこんな感じで、多様な機能を実現するためにしっかりとハイスペックに仕上げてきたことがよく伝わってきます。

重量49gはメガネ常用者でもまぁまぁ重い
僕は普段コンタクトレンズを使っていて、アクセサリーや夜間の視力矯正用としてメガネも併用しているんですが、そのどれと比べても重量を感じました。重心が鼻のあたりに寄っている感覚があって、初めは30分くらいで鼻が疲れてくるので、慣れるまでは結構大変です。

見た目は普通のメガネそっくりなので、外を歩いていて他人の視線が気になったことはありません。もちろん普段から会っている友人にはいつもと違うメガネじゃないと声をかけられることもありますが、パッと見で普通のメガネと見分けがつくようなものではないと思います。

ただし、よ〜く見るとレンズ越しに緑のスクリーンが動いているのが見えるので、暗いところだとそれが目立ってしまうことがあるかも。
緑のスクリーンが視界に現れるって、未来感すごい
メガネを装着すると自動で専用OSの「YodaOS」が起動し、目の前にグリーンのスクリーンがはっきり表示されます。現実の視界に重ねて画面が出てくるので、初めはSFの世界っぽくて結構感動します。

スクリーンには時計・気温・電波強度・バッテリー残量が並んでいて、周囲やデバイスの状態がひと目で分かります。文字が出ているところ以外は完全に透明なガラスなので、視界が削られることもありません。
明るさについては10段階で調節できるので、「昼間は暗すぎる」「夜は眩しすぎる」みたいなこともありません。もちろん輝度を上げすぎると画面のほうに意識が持っていかれて、本来見るべきものが見えにくくなってしまうので、使う前にしっかり調整したいところ。
表示位置は専用アプリから調整できます。アプリ内の表示エリアを動かすとリアルタイムでスクリーンも動くので、自分の視線に合わせるのに苦労はしませんでした。
買う前に知っておきたいところ
ざっと主要スペックや機能面について紹介したところで、まず『Rokid スマートAIグラス』を買う前に知っておきたいところをいくつか紹介しておきます。
11万円、正直高いよね
『Rokid スマートAIグラス』、なかなか面白いジャンルの製品ではあるんですが、定価は109,890円。「気になっているからちょっと試してみたいな」と思っている人には、はっきり言ってかなりハードルが高い値段だと思います。
市場がまだ確立されているわけでもなく、今年ようやくいくつかのメーカーから製品が出てきたばかりのジャンルなので、今この段階で手が出せるのは新しいものが好きな一部の人だけなんじゃないかなと感じます。
ただし、この値段については時間が経てば安くなっていく兆しもあります。例えば、競合として名前がよく上がる『Ray-Ban Meta』は73,700円から買えますし、8月に廉価版の『Meta Glasses』を3割安く出してきました。こんな具合で他のメーカーからも競合製品が増えてくれば、次第に値段も下がっていくはず。
それと、すでにメガネを常用しているユーザーが使うなら、追加費用を払って度付きのレンズを購入する必要があります。公式のオンラインサービスで15,190円から、提携店やビックカメラの店頭で作る場合も専用フレーム6,490円が別途必要と、普通のメガネを1本作れる値段が追加でかかるイメージ。
一部の機能は今後サブスク(月額課金)の加入が必要
現在は全機能が無料で使える『Rokid スマートAIグラス』ですが、2027年4月以降一部のサービスがポイント消費制に移ります。
- オンライン翻訳
- AI音声文字起こし
- Googleマップによるナビゲーション
毎月100ポイントが無料で付与されますが、オンライン翻訳は1分5ポイントなので、20分/月しか使えません。足りなければ月額1,500円でサブスクリプションに加入するかポイントの追加購入が必要で、無料の100ポイントは月末で失効して繰り越せません。
なので、もしオンライン翻訳やAI音声文字起こしなど、ビジネスシーンでの使用用途をメインに考えている人は、毎月追加でお金がかかると考えておいた方が良さそうです。
なかなか難しい話ではあるんですが、こればっかりは無料にしているとサービス提供側に無限に負担がかかってしまうので、仕方がないところですね。
充電ケーブルが独自仕様(メス端子はUSB Type-C)
『Rokid スマートAIグラス』のバッテリーの持ち自体に不満はありません。装着したまま何も操作しない待機状態で約7時間くらいで、普通の使い方なら、半日は余裕で持ちます。1日使っていて突然切れて困った、みたいなことは一度もありませんでした。
利用シーンの中で一番バッテリーを食うのは、AIを使って何かを操作・使用しているときと、カメラで写真・動画を撮影しているとき。そういう使い方をしなければ神経質になる必要はなさそうです。

ただし、充電の仕組みは少し残念なポイント。マグネットで吸着する独自仕様になっていて、本体にUSB Type-Cを直挿しできません。充電用の吸着ケーブルのメス側はUSB Type-C端子になっていますが、やっぱり直挿しできるに越したことはないです。
メガネとしてのデザインはもうちょっと欲しいかも
普段からメガネを掛けることが多い立場で言うと、今回用意されているフレームの形状は少し微妙でした。悪いわけではないんだけれど、自分から選ぶ形ではないかな…というような感じです。
せめてあと2種類くらい選択肢があれば、顔に合う合わないの問題はだいぶ減るんじゃないかと思いますね。

それと、長時間かけることを前提とするのであれば、もう一段の軽量化とバランスの見直しが必要かも。普段メガネをかけている僕ですら一日中つけているのはしんどいなと感じたので、これを機にメガネをかけようとしている人にとっては、長時間の着用はさらに難しいと思います。
機能が多すぎて、どこから使えばいいのか分からない
今回紹介した機能の他にも、『Rokid スマートAIグラス』にはテレプロンプターやAIボイスレコーダーなど機能が搭載されています。
その一方で、機能一覧を俯瞰してみると、ビジネスシーンに最適な機能と日常シーンに最適な機能が、ある種ゴチャっとまとまっているような感覚があります。これが難しいところで、アプリを開いた時の機能一覧もパッと見複雑に感じてしまうので、買ったばかりの人が起動してどこから触ればいいのかわからなくなってしまいそうなんです。
個人的には、いっそ機能を絞って「あなたのメガネがパーソナルアシスタントになります」くらい言い切ってしまったほうが、ユーザーが使い道を想像しやすいんじゃないかなと思います。常に身につけて、視界に入るものについて教えてくれるってだけでも十分に新しいし。
1ヶ月半使って便利だった場面
購入前に気をつけた方がいいところでいくつか気になるポイントを紹介しましたが、1ヶ月半実際に使ってみて便利だなと感じた場面ももちろんたくさんあります。
写真をサッと撮れるのが楽しい。日常の記録手段が増えた気持ち
『Rokid スマートAIグラス』は、フレームのボタンを1回押すだけでフォーカスが合ってシャッターが切れます。

あくまで画質は「まあまあ」なんですが、日常で気になったものをパッと残しておくのにはうってつけ。掲示物をメモ代わりに撮るとか、両手が塞がっているときに目の前の様子を残すとか、そういう良い意味で雑な「記録」がしやすいんです。
スマホのカメラアプリも使うし、コンパクトデジカメもミラーレスも持ってますけど、起動がどれだけ速くなっても「ポケットから出す」「電源を入れてアプリを開く」という手間はどうしてもあるんですよ。その手間がなくなるというだけでも気軽にポチポチシャッターを押しちゃいます。

シャッターを押すとフレームのLEDが白く点灯して、撮影していることが周りに分かるようになっています。こういうタイプのデバイスは盗撮を疑われるリスクと表裏一体ですが、これなら疑われる心配は少しは減ります。ただし光の意味が伝わるとは限らないので、カメラを使う場面は選んだ方が良いですね。
撮影した写真はプレビューこそできますが、基本的にはRokidの専用アプリからWi-FiかBluetooth経由でスマホに取り込む形。「スクリーンショット」として画面ごと写真に残せるので、AIに質問している最中の画面を、風景とともに記録可能です。
翻訳の精度は上々。リアルタイム翻訳はオフ推奨
Rokid スマートAIグラスは翻訳や文字起こし機能もかなり優秀。翻訳に関してはオンラインで89言語以上に対応していて、日本語と英語を含む8言語はオフラインにも対応しています。

さらにリアルタイム翻訳と通常の翻訳の2種類が使えるので、例えば英語で行われる発表会などの場合には、前者を使うのが便利です。
ただし、リアルタイム翻訳をオンにすると、相手が喋っている途中でも随時翻訳が最適化され続けます。つまり、流れてくる言語に合わせて日本語の文章がコロコロ書き換わっていくんです。目の前の日本語が何度も入れ替わるので、人によっては気が散ってしまいそうだなと感じました。
リアルタイム翻訳をオフにすると、相手が喋り終わった少しあとに日本語訳が出てきます。当然タイムラグは発生するのですが、出てくる文章はかなり完成度が高いものになります。
どちらの翻訳タイプを使うかは人によって好みが分かれるところだと思いますが、個人的には無理にリアルタイム翻訳を使わなくてもいいのかなと感じました。

ちなみに設定では、収音シーンを「授業・映画」「対面会話」「ポッドキャスト」の3つから選べたり、スクリーン内のどの領域にどれくらいの分量で翻訳を出すかをカスタマイズ可能。こういったきめ細かさからは、Rokidの力の入りっぷりを感じますね。
字幕表示機能の精度も優秀。気になるのはバッテリー消費
人との会話や大事な会議・発表会においては、翻訳だけではなく音声の字幕表示機能もとっても便利。今回は国内外のYouTube動画を使用して字幕表示機能を試してみました。
英語の認識精度はほぼ100%で、認識の精度に不満はありません。声を拾ってから単語2~3個遅れて文字が出てくる程度なので、待たされている感覚もほとんどないです。
日本語については、話す速度や語尾、方言など言い回しで変わりますが、精度は95%くらい。多少おかしな字幕が混ざっても前後の文脈で補えるので、体感としてはほぼ全部拾えているという印象でした。


ただし、長時間の会議となるとバッテリー消耗がかなり激しくなってしまうようで、体感は連続使用するなら持って3時間といった感じ。字幕を見るために人と目線をずらしてスクリーンを注視する必要もあるので、コミュニケーションの場においては少し使い方を工夫する必要がありそうです。
気づいたら、スマホを取り出さなくなっていた
実際に1ヶ月半使ってみて生活で一番変わったなと思ったのは、スマホを取り出す機会が減ったことです。
最近はドパガキと揶揄されるように、気がつくとスマートフォンを長時間触り続けてしまう人が増えていますが、ショート動画を滅多に見ない僕ですら「あ、触りすぎてるわ」と感じることが増えています。ちょっと調べ物をしただけなのに、それが終わってもSNSを開いてしまって…みたいな。

それがRokid スマートAIグラスを装着していると、何か調べたいものが思い浮かんだ・気になったものを見つけた瞬間に「Hi Rokid、〜〜について教えて」と直接聞くだけで解決するんです。もちろんスマホを使えば解決する話なんですが、取り出さないので触り続ける流れになりません。

加えてカメラがあることで、街を歩いて気になるものを見つけたら「カメラに映ってるものってなに?」と聞けば良いのも気に入りました。スマホだとAIアプリを開く・撮影する・聞くという3ステップが必要なので、それが省略できるだけでだいぶ快適。
まとめ

こんな感じで、今回は『Rokid スマートAIグラス』を紹介しました。
値段だけがすごくネックな製品ではありますが、製品自体の完成度はとても高く、試用した各機能で不十分に感じたところもありませんでした。緑のスクリーンが気になることも少なく、「ちゃんと実用的」に仕上がっています。
特に個人的には、搭載されているカメラを使ったAI連携の使い心地が本当に良くて、それだけで非常に気に入りました。
搭載されている機能の多さから、「なんでもできるAIグラス」と認識されてしまいがちですが、個人的には「日常に寄り添うパーソナルAIアシスタント」としてだけでも、この商品を使う価値が十分あるんじゃないかなと思います。
「スマートグラス」という市場自体が発展途上ということもあり、今後どれくらい普及するかなどはまだまだ未知数の範囲ではありますが、『Rokid スマートAIグラス』は少なくともスマートグラスが日常にある暮らしを快適に体験できるアイテムです。
この記事はRokidの提供でお送りします。レビューにあたっては製品サンプルを貸与いただいていますが、記事内容には一切関与していません。



