2023年の秋に富士フイルムのX-E4を手放した僕にとって、それに代わるおさんぽ用カメラあるいはレンズを用意することは急務でした。ここでいう「おさんぽ」は、がっつり撮影することはないけれどカメラを持った外出という意味で、要は軽量で使いやすいシステムが欲しくなってくるわけです。
もちろんメインカメラとして使っているα7R Vを持っていってもいいのだけれど、標準域で持っているズームレンズはSIGMAの24-70mm F2.8 Artのみ。とてもおさんぽには適さないサイズなので、αをおさんぽ用に使うにはレンズの新調が急務でした。
そこまで画質を求められるような使用用途でもないし、使えればいいやという考えで購入してみたのが、今回紹介するソニー純正のズームレンズ『SEL2860 FE 28-60mm F4-5.6』。
しばらく使ってみて予想外にも良かったので、サイズ感や実際の作例などを紹介していきます。
目次
ソニー『SEL2860 FE 28-60mm F4-5.6』について
今回購入した『SEL2860 FE 28-60mm F4-5.6』は、「最小・最軽量の標準域ズームレンズ」という触れ込みで2021年1月にソニーから発売された、フルサイズEマウント用レンズ。レンズ単体で販売されているほか、『α7C』『α7C II』のズームキット用レンズとしても用意されています。
これまでソニーから発売されてきた可変F値のズームレンズとは異なり沈胴式レンズになっていることが特徴で、通常のズームレンズと比べて使わないときの持ち運びやすさが向上しています。
本体価格はソニーストアで税込52,800円とスペックに対してはややお高めですが、前述した通りズームキット同梱レンズとして広く流通していることもあり、中古カメラ店では美品が30,000円〜、フリマアプリではもっと安価に購入できます。
今回僕はフリマアプリで美品を20,000円前後で購入しました。適正価格も3万円くらいだと思います。
外観やスペック
簡単にSEL2860の外観を見てみましょう。エントリー帯のズームレンズなので仕方ないですが、本体はプラスチック感全開で高級感はありません。
定価5万円ほどのレンズであればもうちょっとなんとかならないものか…って思う反面、キットレンズとしては適正なのかも。
フィルター径は40.5mmとあまり馴染みのない大きさ。レンズフードを装着するためのバヨネットなどはレンズにないので、ねじ込み式フードを別途用意するかフィルターを購入する必要がありそう。個人的には少し大きめのフィルター径にしてほしかったかも。
ズームは望遠端ではなく40mm前後が一番長くなる作りですが、それでもズームレンズとしてはかなりコンパクト。もちろんレンズを格納した場合は長さ45mmまで小さくなるので少し大きなパンケーキレンズのような感じになります。
レンズマウントが金属製なのは唯一の救いといったところでしょうか。プラスチックマウントは耐久性の面から不安だし、定価50,000円オーバーのレンズがプラスチックマウントだったら卒倒してしまいます。
『SEL2860 FE 28-60mm F4-5.6』のスペック
レンズ構成 | 7群8枚 |
絞り枚数 | 7枚 |
焦点距離 | 28-60mm |
開放絞り | F4-5.6 |
最小絞り | F22-32 |
手ブレ補正 | なし(ボディ側対応) |
最短撮影距離(広角端) | 0.3m |
最短撮影距離(望遠端) | 0.45m |
最大径 × 全長 | 66.6mm × 45mm |
フィルター径 | 40.5mm |
重量 | 167g |
ソニー『SEL2860 FE 28-60mm F4-5.6』の主なスペックはこんな感じ。
167gとズームレンズとしてぶっちぎりで軽い仕上がりになっている反面、手ブレ補正や焦点距離の面で軽量化が図られています。特に焦点距離(広角端28mm、望遠端60mm)はメインのズームレンズとして使うにはちょっと中途半端に感じる人がいるかも。
ただし僕の場合、このレンズに求めているのは
- 標準域を最低限カバーできればいい、ズームできればなおよし
- とにかくコンパクトな本体
なので、あまり大きな問題ではありませんでした。
テーブルフォトに使えそうなサイズ感の割に最短撮影距離が長め(広角端30cm、望遠端45cm)なのも少し残念。ご飯の写真を撮ろうとして立つ羽目になったことが何度かありました。
フィルター径は40.5mmとあまり見ないサイズですが、小さければ小さいほど保護フィルターの値段的にも助かる。先ほど書いたように、ステップアップリングなどを使ってメインのレンズとフィルター径を合わせるのも賢そうです。
α7R Vに装着してみた様子
手持ちのカメラがロクにない都合でわかりにくさ満載になってしまいましたが……ハイアマチュア機の『α7R V』に装着してみるとこんな感じ。
レンズを収納している時は言わずもがなですが、レンズを繰り出してもコンパクトさが際立ちます。重量も相まって標準域の単焦点レンズを装着してるような感じで、これならフルサイズ機のズームシステムだから…と持ち運びを敬遠することは少なくなりそう。
最近パソコンを持たない外出はAerの『Day Sling 3 Max』を使うことが大半ですが、SEL2860を装着したα7R Vであれば余裕を持って収納できます。
このくらいコンパクトでズームできる代わりに多少の焦点距離やスペックを妥協できるかどうかが、このレンズが向いているかどうかの判断ポイントになりそう。
『SEL2860 FE 28-60mm F4-5.6』の撮って出し作例
ここからは実際にソニーの『SEL2860 FE 28-60mm F4-5.6』で撮影した作例を紹介していきます。まずはRAWファイルをそのままJPEGで書き出した「撮って出し」の作例をどうぞ。
すごく意外な話ですが、実質的な撒き餌ズームレンズでありながら画質はなかなか良いものがあります。
絞り開放でも解像感はそれなりに高めで、四隅の甘さに目を瞑ればスナップ以外の本格撮影にも耐えられそうな予感。
2段階くらい絞れば四隅の甘さも気にならなくなります。6400万画素のセンサーでこの写りなので画質もかなり高い印象。
画質面だけを考慮すれば50,000円はお買い得な気がします。
細かい葉っぱも比較的潰れることなく写っていて好印象。やや逆光気味というシチュエーションでもよくやっている方だと思います。
ボケも安っぽさはあまり無く少なくとも値段以上な感じ。単焦点レンズや大三元レンズには及びませんが、自然なボケになっていると思います。
反面よくあるズームレンズと違って広角端が28mmなので、手で被写体を持ってそれを撮影するのは一苦労。
この作例のように食べ物程度であれば大丈夫ですが、それ以上に大きいものとなると一般的なズームレンズの広角端との4mmの差が地味に効いてきます。
28-60mmは中途半端な焦点距離ですが、このレンジ内に収まる被写体を撮るならかなり使い勝手の良い印象を受けました。スナップシューター的に使えて楽しい。
『SEL2860 FE 28-60mm F4-5.6』の現像後作例
続いて、α7R Vで撮影したRAWデータをLightroom Classic CCで現像した写真の作例をどうぞ。
申し分ない解像感のおかげでLightroomを使った現像もしやすいのがこのレンズ。
レンズプロファイルを使えば四隅の甘い部分も勝手にクロップしてくれるし、色乗りもほかのソニーレンズと同様にしっかりしているので、色味のコントロールが簡単。
撮って出し時点では手前の岩がほとんど影になっていましたが、シャドウを持ち上げてもノイズが大きく乗っていないのも嬉しいポイント。
最近はAI修正でノイズ除去もサクッとできちゃいますが、パラメータ調整でなんとかなるならそれに越したことはないです。
撮って出しパートでも軽く触れましたが、ほどよいボケ感のおかげで木のイスが後ろの看板と比べて浮き上がっているような印象を受けます。
サクッと使えるレンズでありながら、決まった時のボケ感と仕上がりはハッとさせられます。中古20,000円で買ったレンズとは思えないですよね、これ。
とりあえず出かけるときにはα7R VにこのレンズをつけておけばOK、そんな信頼感のあるレンズでした。
まとめ: 下落した中古品ならコスパ最強かも
こんな感じで、今回はソニーから発売されているEマウント用ズームレンズ『SEL2860 FE 28-60mm F4-5.6』を紹介しました。
約1年くらいこのレンズを使ってきましたが、その中で感じた「良かったところ」「気になったところ」はこんな感じ。
『SEL2860 FE 28-60mm F4-5.6』の良かったところ
- 沈胴式で超コンパクトな筐体
- サイズの割に満足できる写りの良さ
- キットレンズのおかげで安価な中古が手に入りやすい
『SEL2860 FE 28-60mm F4-5.6)』の気になったところ
- 少し中途半端に感じる焦点距離
- プラスチック筐体
- 絞り開放時の四隅の甘さ
- ちょっと強気な定価
何度も触れてきたように、沈胴式ボディのおかげでカメラを使わないときの大きさはフルサイズボディとの組み合わせとしては超コンパクト。
それでいて写りも(本格的な撮影でなければ)十分実用レベルなので、焦点距離さえ気にならないのであれば多くの人が満足できるレンズになっているなと感じました。
一方、キャンペーンなどを使用しない純粋な定価は約50,000円と、レンズ単品では買わないほうがいい!と言わんばかりの価格設定は少し気になるところ。
記事の初めでも紹介したとおり、中古相場は約30,000円・メルカリなどのフリマアプリでは20,000円台で入手できるので、これらを駆使して中古品を購入できればコストパフォーマンスの優れたレンズに化けるので、基本的には状態のいい中古を探すのが良さそうです。
ともかく、良い意味で雑に使えるズームレンズを探しているのであればかなりおすすめできる一本。毎日のスナップはもちろん、「ミラーレスを持っていければいい」ような旅行のシーンにも最適です。